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ベック@NHKホール

ニュー・アルバム『モダン・ギルト』を携え、ベックが来日!
今回の来日は、ゆらゆら帝国との対バンも話題を呼んだが、
ここでは3月24日・NHKホール単独公演の模様をお届けします!


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新作『モダン・ギルト』をひっさげての、なんと通算11度目の来日公演である。
常に新鮮なアイディアと感性でシーンを引っ張ってきたベック。
もちろんその創造性に微塵も衰えはないが、彼もはや40歳を目前にしている。
なにか心境に変化があっても不思議ではない。
はたして今回確認できたのは、かってなくシンプルにストレートに、歌と演奏を聴かせようとする姿勢だった。
それは正しく『モダン・ギルト』で打ち出されたベックの新たな方向性に合致するものだったと言える。


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白い男のマネキン人形がステージ背後にいくつも並べられただけのシンプルなステージ・セット。
後ろにはかなり目の粗いスクリーンを兼ねる電飾が配置されるが、照明は至ってシンプル。
前回来日時はパペット・ショウや映画上映、奇想天外なパフォーマンスなど、さまざまな仕掛けやアトラクション、演出のあれこれで観客の目を楽しませていたが、今回はそういうギミックはほとんどなし。
新顔の女性ギタリストを含む5人編成のバンドが、ひたすら実直に演奏し、ベックは「トウキョウは地球上で一番好きな場所だ」などとリップサービスしつつも、基本的にはただ歌うことに集中する。
前回はそうした遊び心満載のパフォーマンスの数々が、ときに歌や演奏への集中力を散漫にしていた嫌いがなくもなかったが、今回は素っ気ないと思えるほどシンプルなステージ構成で、ベックの歌心をしっかりと伝えてくる。


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ベックは、たとえばローリング・ストーンズのミック・ジャガーやU2のボノのように、ボーカリストとして図抜けた力量があるわけでもないし、カリスマ的なオーラで観客をぐいぐい引っ張っていくタイプでもない。
そのためショウの進行が淡々となりすぎて、ややダレる瞬間がなくもなかった。
しかしそのぶん、身近で彼の体温を感じるようなアット・ホームな暖かさを感じさせたのである。
アコースティック・セットの3曲はもちろんだが、メンバー全員がハンディのエフェクターやサンプラーを持ってステージ前で踊るという、この日唯一の演出らしい演出でも、そうした手作りの雰囲気は一貫していた。


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多様なルーツ、多彩なリズム表現、幅広いジャンルを横断した音楽性、多重録音を駆使した複雑で作り込んだアレンジや構成といった、これまでのベックのイメージを覆すような『モダン・ギルト』でのシンプルで素朴なアプローチ。
そこで明らかになったのはシンガー・ソングライターとしての素朴な自己確認である。
今回のライブはその延長線上にあると言っていいだろう。
原点回帰したベックの次なるステージはなにか。
楽しみでならない。

Text●小野島 大
Photo●YUKI KUROYANAGI


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